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東京高等裁判所 昭和50年(行コ)46号 判決 1976年11月29日

東京都荒川区西尾久四丁目四番一一号

控訴人

門田浅吉

右訴訟代理人弁護士

鶴見祐策

関原勇

東京都荒川区日暮里町七丁目四八三番地

被控訴人

荒川税務署長

伊東保雄

右指定代理人

持本健司

真庭博

加納

杉本武

吉田和夫

右当事者間の課税処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和四〇年一二月二二日、控訴人の昭和三九年分所得税についてした再更正のうち、所得金額九八一、〇〇〇円をこえる部分及び過少申告加算税賦課決定を取消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠関係は、次に付加するほかは原判決の事実摘示と同じであるから、これを引用する(ただし、原判決別表二のうち特別経費のハ建物減価償却費の金額が「一三、五二〇」とあるのを「一三、三一〇」と訂正する。)。

証拠として、控訴代理人は、甲第二号証、第三号証の一、二を提出し、当審証人門田吉良の証言を援用し、被控訴代理人は、甲第二号証、第三号証の一、二はいずれも成立は知らない、と述べた。

理由

当裁判所は、控訴人の本訴請求は理由がないと判断する。その理由は、次に付加、訂正するほかは原判決理由説示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決一八枚目表三行目及び二〇枚目表末行の各「証人」をそれぞれ「原審及び当審証人」と、二一枚目裏一行目の「門田証人」を「原審及び当審証人門田吉良」と改める。)。

一  控訴人は、控訴人の本件係争年分の売上金額を推計するにあたつて被控訴人の主張する同業者の平均差益率は、本訴提起後、被控訴人が訴訟対策として同業者を選定し算出したものであるから、客観的で公平なものとはいい難い旨主張するようであるが、本件取消訴訟は、本件係争年分における控訴人の所得金額、ひいては租税債務の存否についての争いであるから、その審理の対象となるのは、課税標準または税額の多寡である。従つて、本件更正処分において認定計算した課税標準または税額がその範囲を超えているか否かによつて右処分の適否が定まるので、被控訴人としては、本件更正処分が適法であることを主張し立証するために、訴訟提起後に収集された新たな課税根拠であつても適宜提出することは許されるものであるから、控訴人の右主張は理由のないこと明らかである。

二  当審証人門田吉良の証言中には、控訴人方店舗は競争が激しく、店頭売りでも値引きせざるを得ない状況にあつた旨の供述がみられるが、これを裏付けるに足る証拠はない。もつとも、控訴人は、当審において甲第三号証の一、二を提出するものであるが、甲第三号証の一は、塩田竹一が昭和三九年度において酒類、醤油の仕入れに対し九五、〇〇〇円を値引きした旨の証明書であり、それが控訴人方店舗の値引きといかなる関係にあるのか必ずしも明らかではないが、それは措くとしても、その値引きにかかる酒類等の種類、本数、単価等が明らかでない点において甚だ具体性を欠き、それ自体信用性に乏しく、とうてい右門田証人の供述を裏付けるものとはなし難いし、甲第三号証の二も、同証人の証言によると、昭和五〇年度に配布したビラであるから、本件係争年分における値引きの事実を証明するための資料とはなし難い。

三  原判決二一枚目表四行目から同五行目にかけて「まして、その雇人費の金額については、門田証人」とある部分を、「もつとも、当審証人門田吉良の証言により同人が作成したものと認められる甲第二号証には、控訴人主張の雇人に主張の額の給料を支払つたことを裏付けるような記載が存するが、同号証は、当審において初めて提出されたものであり(当審における門田証人の証言には、甲第二号証の出納帳簿は審査請求の際、東京国税局に提示した旨の供述が存するが、原審証人西谷泰治の証言によると、西谷泰治は右審査請求について審理担当の協議官として関与した際、控訴人より資料の提供は全くなかつたばかりか、控訴人方店舗の一切を切盛りしている門田吉良とは一度も会つていないことが認められ、右門田証人の供述は、たやすく措信できない。)、かかる重要な証拠を原審において提出できなかつたことにつき首肯できる理由は全く窺知できず、その記載内容、体裁をみても、給料の支払いはアルバイトに対するものも含めて総べて毎月同日払いであつて常識的でなく、又、アルバイトは日給であり、一週間毎に支払つていた旨、あるいはアルバイトの終了した時に支払つた旨の原審及び当審証人門田吉良の供述部分に矛盾するばかりでなく、広川晴美、針谷道子、同国広、小永吉孝はアルバイトであるから、各月の稼働日数に変化があつてしかるべきであると思われるのに、それらに対する支払金額はほゞ同額であつて不自然であり、人名、金額の訂正、抹消も随所に見られるなど、その記載内容はとうてい信を措き難く、控訴人の主張を裏付ける資料とは認め難い。そして、雇人費の金額については、原審及び当審証人門田吉良の」と訂正する。

よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴はこれを棄却し控訴費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺一雄 裁判官 田畑常彦 裁判官 丹野益男)

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